主人公の少年、トーリーの部屋の中にとびこんできた1羽のビワ。
この鳥は、幻想の産物か、現実の鳥かは明確ではありません。
しかし、おばあさんがこのあたりの鳥たちに餌をやって慣らしていますから、実際に鳥が部屋に入ってきても、そんなに不思議はないでしょう。
玄関の天使の像の頭の上の巣は、去年のひわのものだったといいます。
しかし、子どもが鳥がいればいいのにと心に思った時に、実際に鳥が飛んできたとしたら、子どもの心には大きな印象を与えることでしょう。
それは偶然のできごとかもしれませんが、こんなことは時時起こる現象のようにも思います。
ユング心理学ではこの現象をシンクロニシティ(同時共調性)とよんで、この想像と現実の不思議な一致が、人の心に与える一種の力を重要視しています。
トーリーの前には、こうして昔のできごとが、次々によみがえり、それが昔からの伝承とからんで、彼の心に大きな感激をもたらし、おとなになっていく道をつけてくれます。
子どもがおとなになるために、昔話や幻想やごっこ遊びが、いかに大切かをこの物語は伝えているように思われるのです。